ワタリガラス的働き方

July 18, 2020

先日、TAKIGAHARA CRAFT&STAYに吉村さんという建築家と彼の早稲田大学のゼミの学生10人ぐらいがきて泊まった。

学生のうち7人は女性の建築家、6人は外国からの留学生だった。そこで話したのは、最近の建築科の学生は大企業の建築事務所に就職することを中心に考えている様だということ。

昔は色々の建築事務所で幾つか働いてみてから、自分の建築事務所を作り、そこで仕事を受けるという流れがあった。
たとえ大手の建築事務所で働くにしろ、アトリエ建築事務所で苦労することは役に立つものとされてきた。

そこで今まで、有名になった建築家は、どんな事務所を渡り歩いたか?調べてみようと思った。デザイナーやアーティストも、独立する前には幾つかのアトリエやスタジオで働いてから自分の事務所なり会社を立ち上げるものだ。

コルビジェについて調べてみると、コルビジェは本名ではなくてカラスという意味だということが分かった。自分のことカラス君という彼なりのユーモア。

建築家はどこかワタリガラス的だと思う。色々な土地や建物、はたまた建築事務所を渡り歩いて自分の人生の経験を積み、自分の表現を磨いていく。そう考えると、デザイナーやアーティストも同じだと思う。ワタリガラスのように旅をして、経歴を重ねていく。

この時のワタリガラスはRAVENであって、CROWではない。日本のカラスは都市に定住していて、あまり良い意味がないが、ワタリガラスは自由に旅して良い意味がある。

エドガー・アランポーの小説でも、「大鴉」というのがあるし、NFLのレイブンズもそこからとったらしい。ただ日本の封建時代からの忠誠心からすると、お世話になった会社の先生やお師匠さんからうまく独立するというのには少し抵抗がある。辞め方を少し考えて、うまくしないといけない。

最近はこの壁もだいぶ低くなってきて、一生一つの会社や事務所に務めることはなくなってきた。会社の方も、忠誠心も大切だけど、その人の能力や創造性、才能が大切だと分かってきた。

その為にはかえって、色々なところで働く経験をした方が良い。良い組織を作る為にはワタリガラス的性格の人と、定着する人をうまく合わせて、チームを組み立てていくことが大切になって来る。

今回のウイルスのあとで浮かび上がってきたことの一つに、働き方の色々な可能性が見えてきた。場所を変えて働いてみること。多様な働き方を組み合わせてみること。一社で一生働くことだけではないこと、大都市で働くことが最高の働き方でもなく、他の可能性もあることが分かってきた。

そして農業や食に関係する働きを混ぜたり、自給自足的な働き方を考えたり、それらを組み合わせて生業を作っていく事が大切だということに気づいてきた。

巨大企業に入ったら一生安全に働くことができるという幻想も崩れ、そのための受験や就活も意味が問い直されてきた。自分の人生を自分のものとして作っていくということに気がついてきたようだ。僕はこの状況を見てシメシメと思っている。僕の考えてきた時代が来つつあると。世界中をみてもカオスでパンクになって来た。

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