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January 15, 2008

繁栄と成功

テレビで成人式の模様を見ていたら、将来なりたい職業の一番人気の中に調理士があった。

若者達の人気職業といえば、5年前はアナウンサーや旅行会社などがあった。今では、サブプライムローンで落ちている外資系金融業ではなく美味しいモノを作ったり、環境や食の安全に配慮した仕事、農業までは行かないが、とにかくリアルで生きる実感のある仕事として、料理を作る仕事を普通にやりたいと言ってくれたことが、僕はうれしかった。

僕らが開いたスモークというレストランにも、ニューヨークのプラットインステュートで彫刻を学んでから料理の世界に入り、フランスでアストランスという3つ星レストランで活躍していた船越雅代さんという人が味を見てくれている。

彼女を見ていると、食のアーティスト/表現者であるのが良くわかる。しかし、いわゆる創作料理は嫌いというスタンスも僕の好み。美味しいという感覚はきれいという感覚と通じている。美味しいもので人を喜ばせ、感動させようというのは、すこしでも良いアイディアや良いデザインで人を驚かせてやろうということに通じる。

しかし残念ながら現在の教育はマーケッティング、何を人は喜びそれを得る為にはどうしたら良いかという視点で教えている。ともすれば、どこの店が売れているから、メニューをまねしようとか、やっぱりたくさん店を出して儲けるのが成功でその為にはどうしたら良いか、ということだけになってしまっている。料理を作る醍醐味は喜ばせて驚かせ、感動さえさせて、それでもちゃんとお金も儲かる。というのがやっていて気持ちいい。

それには経営的な戦略が必要だし情報の流し方がとても大切になってくる。現実に対してあくまでも謙虚で素直な視点で、一体何が良いのかを考えて、それに向かって最善を尽くすのが良い。それが真っ当なことだが、なかなかそうは考えない。きちんと食べて良く噛んで、咀嚼して考える。その上に立っての成功ならば嬉しいけど、そうではなく一番簡単に成功するにはどうすれば良いかと考えることは、結果的に今の社会に閉塞感をもたらしている。

そういう考えの流れから、自分が満足すればそれで良い、自分を誉めてやりたいなどという言葉が出てくる。しかし、他の頑張った人たちに敬意を払うというのが普通だと思う。会社も社会が繁栄や成功を求めるのには、もちろん文句はないが、一体何の為と思うことがありすぎる。そしてその為にがむしゃらにならない人はやる気がないと見なされる。

現在の世界の状況はそうした流れの延長上では解決できない諸問題に直面している。何にとっての繁栄や成功なのか。これらとは違った意味で繁栄の先にある文化を獲得することに注意を注いで行きたい。そうしたことを若い人は直感で感じ始めている。

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