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May 1, 2010

食と学びのデザイン

私たちは日常的に「デザイン」という言葉を使っていますが、かつての日本のデザインは意匠ともよばれ、独自の美意識や哲学と、手仕事を基調とする精緻な生産技術の両輪によって、調度やしつらいなど、生活の全体をかたちづくっていました。

しかし戦後の急速な工業化は、生産の技術としてのデザインばかりをクローズアップしてしまい、生活全体のバランスは大きく崩れ始めています。そこで今必要なのは、もう一度日本のデザインの原点に戻ってみる、ということだと考えました。

人の生活の根幹には、「食」と「学び」があります。「食」が栄養を口から摂取し、咀嚼し、自らの身体(自身)をつくることだとすれば、「学び」は情報を取り込み、頭で考え、自らの分別(自分)を獲得することです。

何を食べ、何を学ぶか、このふたつは全く違うようでいて、じつはどちらも自分自身をかたちづくることであり、ひいては社会をデザインする原点、すなわちデザインの素(もと)ということができます。それは元気の素であり、元素、要素、素材、素養、素手、素人、素数といった言葉へとつながります。

デザインは、常にこうした人間の存在の原点に立ち戻って考える行為と、それを高度な技術で美しく創造する行為、このふたつの循環から成り立つものではないでしょうか。

とりわけ日本料理は生の素材を大切にしてきたように、日本の文化の素には、非常に豊かなデザイン資源があります。そこから心づかいや気づかい、気配りといった、きめ細かなディテールや仕上げ方を考えていくことで、日本のデザインを再生させていきたい。

それが今、全世界が共通して直面する、価値の本質的な問い直しや、生活全体を包括する地球環境問題に寄与することになるのではないか。「これってデザイン?」、そんなふうに思われるほど、あたりまえなデザインの「原点=素」にもう一度出会うことで、日本のデザインが描く新たな世界観の可能性を探ります。


『日本のデザイン2010展』開催中
会期:2010年04月08日(木)~2010年05月09日(日)
時間:11:00-19:00
入場料:無料
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
   東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F
   
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